拳にモノを言わせますけどよろしくて?
 リュティシアは厳しい口調で問い詰めた。ジェレミアスのまなざしが遠くなる。

「いいかげん王太子たちが邪魔で仕方ありませんでしたので。そろそろ排除しようかと。さすがに王族殺しとなれば一命を賭するしかございますまい」

 この後に捕縛され死刑となるのも厭わず――との覚悟だ。そう告げられてフェリスベルトの顔が歪む。

「そんなことをされて母上が喜ぶとでも? 私だって王位など望んでいない」
「――なのでしょうな。そういうお心映えだからこそ、私はエリセテさまを愛した」

 ジェレミアスの微笑みは寂しげだった。だが愛おしさに満ちてもいる。

「望まれていなかったかもしれない。でも私はあの方の生きた意味をこの国に刻みつけたかった――」

 殉じた愛を想いながら、ジェレミアスはローブから大きな符を取り出した。ギクリとしたフェリスベルトがリュティシアを背にかばう。
 だがジェレミアスがその符を使ったのはみずからの首すじにだった。晶化術が発動する。

「何をするジェレミアス!」
「お別れですフェリスベルトさま……どうぞこの国を、お手に」

 カクリと膝をついたジェレミアスの首の後ろで、どんどん何かが染み出してきていた。その量の異常さにおののいてフェリスベルトが叫ぶ。

「国などいらん! ここで死ぬつもりか? 馬鹿者め、パルミロもセミオンも生きているぞ! 死なずに罪をつぐない、すべてを見届けろ!」
「いえ、あの呪いは止められませぬ……」

 ジェレミアスが床に倒れ込みながら目をやるのは、巨大な黒い結晶。
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