拳にモノを言わせますけどよろしくて?
王太子パルミロも第二王子セミオンも、命は助かった。だがパルミロは光をほとんど失ったそうだ。
「私は太子の地位を辞そうと思う」
そう申し出たパルミロに、思いとどまるようセミオンは泣きながら懇願した。その額から顔にかけても大きな傷がある。
「少しばかり見えづらくとも、兄上の人徳があれば皆ついていきます」
「だが王とは、いざという時に戦の指揮も取らねばならないものだ。セミオンに任せた方が」
「私は――魔法に掛けられていたとはいえ、兄上を傷つけ簒奪した王位を手にすることになります。堂々と民の前に立てると思いますか」
彼らは元々仲の良い、明るく前向きな王子たち。
ジェレミアスの反転晶術で人格が歪んでいたのは最近の一時期だけのこと。本来なら妬みや憎しみにとらわれるような二人ではなかったのだ。
「――そうでしたのね」
リュティシアは申し訳なさそうに肩を落とした。セミオンのことを甘ったれで自尊心ばかり強い男だと思っていたが、どうやら甘えん坊だが愛嬌のある王子サマだったらしい。
「リュティは昔の様子を知らないからな。仕方ないことだ」
フェリスベルトはクスクス笑う。セミオンのこととなると馬鹿丁寧な口調だったリュティシアを思い出してしまった。いたたまれなくてリュティシアはわざと拗ねてみせる。
「嫌うほどの方ではなかった……最初に私が我慢していたらよかったなんて」
「セミオンと結婚していたら、と言うのか?」
フェリスベルトの瞳が曇る。難しい顔をした婚約者がズイとソファの隣に移動してきてリュティシアは腰が引けた。