拳にモノを言わせますけどよろしくて?
 ここはリュティシアの居間。事件の処理に関してエドゥアルドに詳細を聞かせるのもためらわれて、進展があるとフェリスベルトはこちらへ報告に来ている。

「リュティ……でも私のことが大好きなんじゃなかったか?」
「え?」

 リュティシアは慌てる。その通りだけど、ちゃんと伝えたことなどなかったはずだ。

「いいや、ジェレミアスに宣言していた。私はしかと聞いたぞ」
「――あ」

 そうだ。これから二人を、と頼まれてキリッと言い返したような――『私はエディを守りますしフェルさまのことが大好きでしてよ!』。
 記憶がよみがえってジワジワ赤面していくリュティシアを、フェリスベルトのまなざしが優しく捕らえる。

「あんな場合に嘘はつかないね? リュティシアの気持ちが聞けて嬉しかったな、ただの政略結婚だと思われていなくて安心した」
「そんな……!」

 リュティシアは驚いて口をポカンと開いてしまった。ニコリとされ慌てて唇を結ぶ。

(フェルさまも不安だったの……? 私の気持ちが自分にないのかもって)

 いつもゆったりかまえて隣にいてくれたフェリスベルトが、それなりに悩んでいたとわかってリュティシアの心臓がキュウゥッとなった。恥ずかしくてうつむき、ぼそぼそ言う。

「もう……私、フェルさまに出会えてとっても幸せですのに」
「本当かい? じゃあ……これからは健やかなる時も病める時も、人生をともに歩むと誓ってほしい」
「……え。それって」

 確か、結婚式で問われることではなかったか。
 きょとんとするリュティシアに、フェリスベルトは真顔でうなずいた。

「予行演習だ。さあ……答えて、リュティ」
「ええと……ええっと」

 困ってしまう。
 誓うのはまったくかまわないのだけど、そのセリフの後にはたぶん。

「……誓い、ます」

 小声で言ったら、愛おしげなフェリスベルトの笑みが降ってきた。
 そして「私も誓う」というささやきと――静かな口づけも。


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