拳にモノを言わせますけどよろしくて?
「ではセミオン殿下の婚約破棄の意思は変わらないのですな。我が国の王女を蔑み、あらためぬと。そのような御仁に我らの大事なリュティシア姫を渡すわけには」
「待たれよ。リュティシア王女をアルヴェイン王家へ迎えたいという我が願いもまた変わらぬ。いや、本人に会ってみていっそう人柄に惚れ込んだ」

 いや、リュティシアに惚れられるような人柄があっただろうか。王の言葉を聞きながら心の半分はエドゥアルドのおやつを気にしている王女なのに。
 エドゥアルドはお茶をこぼさず飲めるのか。クッキーのおかわりを欲しそうにしているけれど、あまり食べさせては食事に響くだろうか。
 渦中の人のくせにそんな態度なのがリュティシアだ。だが王は探るような目をする。

「エドゥアルドのことが気に入ったようで何より。〈育成〉の加護を持つと……子ども好きになるものなのかな」
「陛下、それは」

 外務卿はその示唆で察した。この場にエドゥアルドが呼ばれている理由。
 王家にリュティシアを迎えたいのは変わらないが、その結婚相手はセミオンではなく――。

「もしや私に、こちらのフェリスベルトさまとの結婚をお勧めなさいますの?」

 リュティシアが笑顔で言い放ち、王と王弟はそろって息を飲んだ。

 その通り、アルヴェイン国王が匂わせた内容は明け透けに言えば「婚約者の取りかえっこ」。
 セミオンが言い出した、第二王子の代わりに婚約する王族男性とは――フェリスベルトのことなのだった。

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