拳にモノを言わせますけどよろしくて?
「――私のお相手がセミオン殿下でなくとも、国同士の約束が果たされることには変わりない。そうおっしゃるのですね」
「とても失礼な申し出なのは理解しています。私は以前に妻を迎えたことがあるし、息子もいる。それにあなたより十歳も年上だ」

 フェリスベルトは切々と訴えた。

「しかしセミオンとの結婚を強行しても夫婦の間にわだかまりが残ります。遥々隣国からお迎えしたあなたに不幸な生活を送らせるぐらいなら私との婚姻を、と陛下は考えたのです。元より拒絶されることを見越してはおりますが、念のために提示した案なのをご承知おきください」
「いいえ。とても素晴らしいお考えですわ」

 晴々した笑顔になったリュティシアはフェリスベルトを見つめた。

「――は?」
「それならすべてが丸くおさまりますものね。陛下の慧眼に感服いたしました」

 優雅に言い切るリュティシアに、全員がうろたえる。

 外務卿は「ガルディア本国に(はか)ってもいないのに」と。
 王は「元はセミオンの我がままなのだが」と。
 フェリスベルトは「事態が丸くおさまればそれでいいと? リュティシア王女は自分の気持ちを押し殺すつもりなのか」と。
 そしてエドゥアルドは……話がまったくわからなくて。

 でもリュティシアは満面の笑みで言い切った。

「そうなれば私、エドゥアルドさまの家族ですもの。こんなに嬉しいことはありませんわね!」
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