拳にモノを言わせますけどよろしくて?
  ✻ ✻ ✻


 リュティシアは静かな廊下を案内されていた。後ろにはユーニスがしずしずとついてくる。
 二人は王弟フェリスベルトと子息エドゥアルドの部屋へ向かっているところだ。周辺はさりげなく人払いされているようで、誰にも行き合わない。

(フェリスベルトさまとの縁談……本当に内密にしてくださっているのね)

 国王はガルディア外務卿の要請にきちんと応えたのだった。それは無茶を提案したアルヴェインからの誠意でもある。
 リュティシアとしては、どうせ結婚するならセミオンよりフェリスベルトの方が好ましかった。エドゥアルドとはもっと仲良くなりたいし、面会の申し込みは望むところだ。

 先に立って歩くのはフェリスベルトの従者を務めているという男だった。名をトルカートという。
 しなやかな体つきで律動的な足取り。迎えに来た時に挨拶した以外はほとんどしゃべらないが、リュティシアの歩く速さをチラチラと気にしてくれているのがわかる。

(気の回る護衛……というところかしら? フェリスベルトさまは知的な雰囲気の方だし、荒事はお好きでないのかも)

 だから従者が武人系なのかもしれない。逆に剛力持ちのリュティシアに護衛は必要ないので、ユーニスは生活や社交の補助に全振りしている。
 となるとフェリスベルトの前でリュティシアはおとなしくしていた方がいいだろうか。できるかどうかはともかくとして。

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