拳にモノを言わせますけどよろしくて?
 本国でのリュティシアは活発に過ごしていた。
 ハイキングへ出掛けた山で熊に遭遇し、背負い投げで追い返したことがある。
 貿易路に山賊が出るというので討伐に同行し、賊の半数がリュティシアの拳に沈んだこともあった。あの時は兵士たちが「仕事を取らないでくれ」と泣いたものだ。
 そんな振る舞いはさすがに封印するつもりではいたけれど、運動不足になりそう。ちょっと残念な気がする。

(まあ普通の男性は、妻に強さを求めないわよね)

 リュティシアにもそれぐらいの常識はあった。自分を曲げてまで世間に従う必要はないが、ことさらに〈剛力〉を誇示するのはやめておこうとは考えている。

 しかし「妻」になるといってもフェリスベルトとの縁談は降ってわいたものだ。あちらも元々は再婚など望んでいなかったはず。
 ならばリュティシアのことを本気で歓迎しているのは、たぶんエドゥアルドだけだろう。それでかまわない。本物の妻にならずとも、継母としてのんびり暮らせればリュティシアに文句はないのだ。

 ――となると、リュティシアとフェリスベルトの関係はどんなものになるべきか。

(……「戦友」? それがピッタリよね! 子育てに奮闘する同士ってやつよ!)

 どうにも勇ましい語彙しか頭に浮かばないリュティシアだが、できればフェリスベルトともうまくやっていきたいとは思っていた。



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