拳にモノを言わせますけどよろしくて?
「――リュチチアしめ(・・・・・・・)さま!」

 迎えてくれたエドゥアルドは今日も舌足らずで、可愛さが突き抜けている。
 駆け寄ってリュティシアに抱きつこうとした息子の肩をフェリスベルトは慌てて押さえた。

「エディ、失礼はいけないよ」

 叱られてバツが悪そうにする小さな紳士に、リュティシアは笑み崩れた。

「ごきげんようエドゥアルドさま……ところで私もエドゥアルドさまをギュッてしたいのですけど、よろしくて?」

 リュティシアが軽くかがんで腕を広げるとエドゥアルドの顔が輝いた。

「うんっ!」

 ポスンと胸に飛び込んでくるエドゥアルドは、もう赤ちゃんではない。だがまだまだ小さな男の子だ。腕の中の体は細くて軽くてやわらかい。
 母親というものに憧れ、夢を見ているエドゥアルドに失望されたくなかった。でもどうしてあげればいいのか、具体的なことはわからない。リュティシアはエドゥアルドのふんわりした黒髪にそっと頬を寄せた。
 エドゥアルドを抱くリュティシアのことを、フェリスベルトはじっと見つめる。結婚するかもしれない相手の飾らない人柄が伝わり安堵したが、なんだか胸の内がフワフワして自分が頼りなく感じた。とにかくリュティシアを招き入れる。

「こんな入り口ではなく居間へどうぞ。さておかしいな、エディはもう自分で歩けるような気がするんだが。抱っこが好きなのか……」
「ぼく、あかちゃんじゃないよ!」

 慌てて胸から体を離すエドゥアルドの手を、リュティシアはそっと握った。

< 27 / 170 >

この作品をシェア

pagetop