拳にモノを言わせますけどよろしくて?
 緑がかった黄色い瞳のリュティシアと、淡い緑の瞳のエドゥアルド。
 二人は年こそ十三歳差で姉弟でも通用するが、意外に母と子としてしっくり馴染んで見えた。そう思うとふたたびフェリスベルトの胸がざわざわする。

(二人の仲が良いとなんだか苦しい。何故だ)

 ありがたいし嬉しいことなのに。

(――前の妻に、申し訳ないと感じているのだろうか)

 フェリスベルトは切なさに目を細めた。昔、手のひらからこぼれていった命はもう取り戻せない。あれはあれで――穏やかな日々だった。

「――フェリスベルトさま、教えてくださる?」

 いきなりリュティシアが駆けてきてフェリスベルトの腕に触れた。物思いに沈んでいたフェリスベルトがハッとなるのを優しく包むように笑う。

「向こうに咲いている花、私が知らないものなんです。ガルディアは高地で涼しいから、こちらとは植物も違いますのね。アルヴェインのことをいろいろ知りたいわ!」

 リュティシアは、新しい婚約者のそこはかとない憂うつに気づいていた。
 だからことさら明るく近づいてみる。せっかくなら一緒に幸せになりたいから。

(――やっぱり再婚なんてするつもりがなかったのね。なのに国のため、エディのために責任を果たそうとしているんだわ)

 フェリスベルトは前の妻をとても愛していたのだろうか。今もその愛は胸にそのままあるのかもしれない。だったら。

(私はエディの母になれれば、フェリスベルトさまの妻じゃなくても――そう伝えた方がいいのかしらね?)

 わりと真剣に検討する。それは白い結婚、というものだ。
 リュティシアは恋だの愛だの男女のことだのに興味がないので、ぶっちゃけその方が気楽だと思う。

 庭園を並んで歩いていくと、「お父さま、お母さま!」と嬉しそうに呼ぶエドゥアルドの声がした。二人はとりあえず「両親」にはなったらしい。
 でも「夫婦」になれるのかどうかは、まだわからなかった。

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