拳にモノを言わせますけどよろしくて?
  ✻ ✻ ✻


 今日、リュティシアは少し緊張していた。これから向かうのはエリセテ太后の宮なのだ。
 エリセテ太后といえば、先王の妃にしてフェリスベルトの実母。
 ――つまりこれは、嫁と姑の顔合わせ!

「リュティシア、そう硬くならないでほしいな」
「そんなの無理ですわ」

 形式だけの夫婦になる可能性はあるが、これでも後妻に入る身だ。不安が湧くのは仕方ない。
 エリセテは先妻と距離を保ち、何も口を挟まなかったという。それは愛や信頼からなのか、拒絶なのか、はたまた無関心だったのか。しかも今回は隣国の姫などといきなり再婚することになった。どう思われているか、さすがのリュティシアでも気になってしまう。

「おばあさま、やさしいよ?」

 手をつないでくれるエドゥアルドにまで心配されてしまった。リュティシアはちょっと反省する。

「そうなのね。エディのことを大切にしている方なら、私も仲良くできると思うわ」
「うん!」

 ぶん、と大きく手を振るとエドゥアルドがきゃあきゃあ笑う。その声は石造りの廊下に反響し、遠くまで届いた。

 リュティシアにも少しずつ様子がわかってきたアルヴェインの王宮は、あまり華美ではない。この奥の宮の廊下も絨毯が敷かれているわけでもなく石がむき出しで実用的だ。
 アルヴェインは農耕と漁業といくらかの貿易で地道に暮らす国。どちらかというと素朴な文化が根付いている。宮殿もそんな国民性を映してか、綺羅綺羅しくはなかった。

 その廊下の向こうから暗緑色のローブの男が歩いてきた。立ちどまり恭しく頭を下げられて、フェリスベルトはにこやかな笑顔だ。
 
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