拳にモノを言わせますけどよろしくて?
「まあまあ、すっかり甘えてしまって。〈育成〉の加護のお力なのかしら……?」
「そんなこともないかと。ただエディが素直な良い子なんですわ」
「そうなのね。ごめんなさい、アルヴェインには加護を持つ人材はあまり現れないので、よくわからなくて」

 それも無理はない。加護とは、自然の間に満ちる息吹が特定の生命へ遍在したもの。山あいのガルディアならともかく、人が築いた文明の広がる町ではほとんど失われた力だ。
 だがアルヴェインではかわりに晶化術という魔法が発達してきた。人間の中にわずかに残った自然の息吹を増幅して使うらしい。みずからの持つ息吹を感じ取れるか否かが晶術師の才能の有無となると聞いてもリュティシアにはピンとこなかったが。

「私には晶化術のことがまだあまり……先ほどジェレミアスという方とすれ違いました。高名な晶術師ですのね?」
「ええ。ジェレミアスと私は長い付き合いなのよ」

 エリセテはうなずいた。
 ジェレミアスとエリセテが出会ったのは、町の小さな晶術院だそう。人々を治療するための晶術院がアルヴェインの町には点在していて、心の不調は晶術院、体のことなら療術院と使い分けられているらしい。
 まだ身軽な貴族の娘だった頃のエリセテは、貴族の義務として支援する晶術院へたまに出入りしていた。そこで見習い術師だったのがジェレミアス。

「とても腕のいい術師だと思っていたわ。そうしたら案の定、王立結晶院に引き抜かれて王宮で再会するんだもの。それ以来よく診てもらっているのよ」
「まあ……すごい方でしたのね」
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