拳にモノを言わせますけどよろしくて?
「フェリスベルトのことも小さい頃から診てくれていてね。この子はわりと我慢強かったけれど、勉強でわからないことがあると悔しくて泣いたりもしたの。そういう時にはジェレミアスが心を鎮めに来てくれたものよ」
「やめてください」

 子ども時代のことまで話題にされて、フェリスベルトが慌てて止める。
 今はこんなにおだやかなフェリスベルトが泣いて悔しがるなんて。リュティシアはクスクス笑ってしまった。困った顔をして目をそらすフェリスベルトは、いちおう婚約者へ見栄を張っているのかもしれない。年上の自分の方が大人でいなくてはならないから。

(やはりフェリスベルトさまは優しい――でもちょっと可愛いところもあるのね)

 それが知れただけでもエリセテの所へ伺候した甲斐があったというもの。もうすぐ姑となる控えめな女性は、リュティシアの手をそっと取りニッコリ笑ってくれた。

「私は表舞台に出ないようにしているけど……この国や王宮のことで何かわからなかったら相談してちょうだい。息子や孫のためでもあるのだから、遠慮しないで」
「ありがとうございます。心強いですわ」
「ねえおばあさま、このあいだね、おにわでお母さまとおいかけっこしたの。おばあさまもやる? みんなでやろ!」

 お話ばかりでつまらなくなったのか、エドゥアルドがウズウズし始める。さすがに嫁姑そろって駆け回るのは――想像したのかフェリスベルトが声を殺して笑い始め、リュティシアはちょっとふくれつらをしてみせた。
 エドゥアルドとだけでなくフェリスベルトとの関係も、少しだけ距離が縮まったような気がした。

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