拳にモノを言わせますけどよろしくて?
  ✻ ✻ ✻


 第二王子から王弟へとリュティシアの相手が変わったことで、結婚式はひとまず延期されていた。セミオンのために用意を進めていたものをそのまま、というのはいかにも失礼だし感じが悪い。
 あらためて婚儀を計画するまでリュティシアはゆるりとアルヴェインに慣れることにし、ガルディア使節団は本国へ帰っていった。


 リュティシアが着々とアルヴェインに馴染んでいっている一方で、元々の婚約者だったセミオン王子は心を腐らせていた。父王から謹慎を申し付けられたからだ。
 謹慎も仕方のないことではある。取り替えたフェリスベルトとの結婚を承諾してもらえたからいいものの、下手をすればガルディアと一触即発の危機を招くことになる婚約破棄事件。感情的にならずに外交を学ぶべし、と缶詰めにされているだけなのをむしろ感謝すべきところだが。

「……何故こんな目に」

 ブツブツと口から文句をあふれさせるセミオンの部屋を訪ね、晶化術を施そうとしているのはジェレミアスだった。王族が相手ともなると高位の晶術師しか施術を許されない。

「お気持ちはわかります。さあ、この件を前向きに考えられるようにお手伝いいたしますので」
「ああ。やはり結婚相手となると、国内貴族の娘で人柄がわかっている相手から選びたかったな。あんな乱暴姫だとは思いもしなかった」
「さようでございますか」

 心を逆立てないように相づちを打ちながら、ジェレミアスは患者セミオンの手を取る。目を閉じてセミオンの中の息吹を探り、どのような澱みが貯まっているかを量るのだ。それによって吸い出す負の感情の種類と量を決める。

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