拳にモノを言わせますけどよろしくて?
「ふむ……先日より落ち着いてこられましたかな」
「そうか? ジェレミアスの晶化術のおかげだ」
「恐れ入ります。殿下のお心が強くあられるからでございましょう」

 取り出した紙に描かれた陣形と文字。術師以外には読み解けないこの符を使って晶化術は行われる。

「失礼いたします」
「うむ」

 軽く頭をうつむかせたセミオンの首の後ろにそっと符を当てる。シュウ、とやわらかな光が発せられると、魔法陣にじんわり灰色のものがにじみ出してきた。これが澱みだ。
 セミオンから吸い出されたそれは符の中心に集まり結晶していく。そして魔法が完成するとともにコロリと床に落ちた。ジェレミアスは布を手にして慎重に拾い上げ、セミオンに示す。

「こちらがこの度の治療で取れた結晶でございます。前回よりも小さくなりました」
「本当だ。うん、もやもやが減ったような気がするぞ……胸がざわつく感じはあるが」
「晶化術を使った直後でございますから……今の状態に心が馴染むまでは、しばしの我慢をお願いいたします」

 ジェレミアスは使用した符を剥がし、結晶とともに小箱へ厳重にしまう。符の裏からボロッと黒い欠片が落ちた。慌てて拾い、それも片づけた。
 これは一般に知られてはならない魔法だ。人に働きかけ、直接心を動かすものだから。

「一刻ほどごゆるりなされませ。また日をあらためて経過を診に参ります」

 鷹揚にうなずくセミオンに頭を下げて、ジェレミアスは部屋を辞した。


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