拳にモノを言わせますけどよろしくて?

 ガルディアは国土の厳しい自然のおかげか、天の祝福たる加護を持つ者が多く生まれる。神秘の山岳国家と称されるゆえんだった。
 中でもリュティシアは珍しい多重の加護持ち――なのだが、「剛力」という加護は姫として微妙過ぎる。なので対外的にその加護は秘密とされていた。アルヴェインへ示されたリュティシアの加護は、もうひとつ持っている「育成」のみ。

「ガルディアの宝石と名高いリュティシア姫、これからは私とともにアルヴェインの国を育てていってほしい!」

 セミオンがそう言ったのは、あらかじめ伝えられた情報にのっとった社交辞令だ。
 応えてリュティシアはしとやかにカーテシーを決めた。

「力及ぶ限りつとめさせていただき――」

 キ――ンッ!

 リュティシアを不思議な耳鳴りが包んだ。これは加護が働く前兆。ハッとして天井を見上げる。
 ガチンッ!
 何かが壊れる不穏な音。

「危ない――!」

 ダンッ!!
 床を蹴ってリュティシアは飛び出した。剛力が発動する。目の前に立つセミオンに肩が当たったが仕方ない。
 天井の燭台(しょくだい)が斜めになり、降ってきたのだ。その下にいるのは王太子夫妻。
< 4 / 79 >

この作品をシェア

pagetop