拳にモノを言わせますけどよろしくて?
ガルディアは国土の厳しい自然のおかげか、天の祝福たる加護を持つ者が多く生まれる。神秘の山岳国家と称されるゆえんだった。
中でもリュティシアは珍しい多重の加護持ち――なのだが、「剛力」という加護は姫として微妙過ぎる。なので対外的にその加護は秘密とされていた。アルヴェインへ示されたリュティシアの加護は、もうひとつ持っている「育成」のみ。
「ガルディアの宝石と名高いリュティシア姫、これからは私とともにアルヴェインの国を育てていってほしい!」
セミオンがそう言ったのは、あらかじめ伝えられた情報にのっとった社交辞令だ。
応えてリュティシアはしとやかにカーテシーを決めた。
「力及ぶ限りつとめさせていただき――」
キ――ンッ!
リュティシアを不思議な耳鳴りが包んだ。これは加護が働く前兆。ハッとして天井を見上げる。
ガチンッ!
何かが壊れる不穏な音。
「危ない――!」
ダンッ!!
床を蹴ってリュティシアは飛び出した。剛力が発動する。目の前に立つセミオンに肩が当たったが仕方ない。
天井の燭台が斜めになり、降ってきたのだ。その下にいるのは王太子夫妻。