拳にモノを言わせますけどよろしくて?
 両侯爵家はともに王太子妃の候補を出して争った間柄だ。モンサント家は引き下がって祝福してみせたが、不満が残っていないとは限らない。
 さらに結婚後しばらく経つのに、フロリアーナ妃はなかなか身ごもらなかった。それで禍根が再燃するのでは、ともささやかれている。

「すまん。狙われたのはフロリアーナなのではと考えたらたまらなくなって……」
「考えすぎはよくありません。調査はなされておりますゆえ、しばしお待ちいただく他ないかと」
「事件には晶術師が関わっていたと聞く。モンサント家は晶化術を頼んだりしていないか?」

 う、とジェレミアスは言葉に詰まった。モンサント家による晶術師の利用は最近もあったはず。そんな記録は目にしていた。
 だが心の不調があれば術師を呼ぶのが当然だ。特に貴族ともあろう者が不安や怒りに左右されて言動を律せないのは恥とされている。

「……殿下といえども、それは職務上のことですのでお答えいたしかねます」

 迷った末に絞り出したそんな言葉。
 パルミロは仕方なくジェレミアスを解放したが、むしろ疑念を深めていた。


< 42 / 170 >

この作品をシェア

pagetop