拳にモノを言わせますけどよろしくて?
「山と森の厳しさの中の暮らしがすがすがしくて憧れましたわ! 挿し絵も美しいんです」

 子どもの頃からカティアも大好きな本で、本物のガルディアの姫君に会えて嬉しいのだとか。そんな風に言われてリュティシアは照れてしまった。

「私はぜんぜん大したものじゃないのよ?」
「ううん、お母さまはカッコいいもん。おいかけっこもじょうずだし! あのね、ぼくもおとなになったら、かごがつかえたりする?」
「……それはできないと思うわ。生まれながらに授かるものだから」

 リュティシアはそっとエドゥアルドの頭をなでた。
 加護とは自然のもたらした、ほんの気まぐれ。あってもなくても人はただ生きていくだけだ。

「エディはエディなのだから、それでいいのよ」
「ふうん?」
「――さて、今度はアルヴェインのことを教えてちょうだい。エディの国のこと、私も知りたいわ」

 エドゥアルドを悲しませないように話を変えて、リュティシアは子どもの自尊心や知識への探究心を導いていく。そんなやり方がまさに〈育成〉の加護なのだろうかとカティアは感心した。

「うーんとね、アユウェイン(・・・・・・)のみやこは、このまちだよ」

 国の名前もやはり言えていないが、それはひとまず仕方ない。リュティシアはうんうん、と質問を続けた。

「そうね。他に大きな町はある?」
「ある。おっきなみなとまち!」
「港町……まあ素敵ね。私、海を見たことがないのよ」
「――そうなのか?」

 いきなり割り込んだ声は、フェリスベルトのものだった。息子と婚約者の様子を見に、戻ってきたところだ。

「フェリスベルトさま、お帰りなさいませ」
「少しだけ抜けてきたんだ。エディがいい子にしているか気になって……リュティシアは、海を知らない?」
「ええ……ガルディアは山の国ですから」

 ふうむ、とフェリスベルトが考え込む。どうしたのだろうか。
 婚約者は何を思うのか。わからないがリュティシアはなんだか胸が高鳴るのを感じた。

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