拳にモノを言わせますけどよろしくて?
「……だいじょうぶですわ」

 トルカートに助け起こされるリュティシア。そしてリュティシアに引っぱり上げられるエドゥアルド。皆の無事を確認してフェリスベルトは、自分が恐怖に鳥肌を立てていたことに気づいた。エドゥアルドを片手に抱き――リュティシアの背にも手を添える。

「まったく……いい子にしていると言ったのは誰だい、エディ?」
「ごめんなさい……」

 しょんぼりするエドゥアルドの前で、リュティシアは別の理由でドキドキしていた。

(フェリスベルトさま、手! 手が背中に!)

 これまではエスコートとして軽く腕を組むぐらいしかしてこなかった二人の距離が近い。叱られているのにそのことが気になってリュティシアは硬直してしまった。

「トルカート、よくやった」

 スッと一歩下がって頭を下げる護衛をねぎらいながら、しかしフェリスベルトは微妙な気分だった。

(トルカート……リュティシアのことを抱きとめる形になっていたな……)

 婚約者のフェリスベルトより密着されてしまったことに、なんとなくわだかまりを感じる。
 この場合は仕方のないことだとわかっているのにモヤモヤしたのを認めたくなくて、フェリスベルトも無表情に押し黙ってしまった。


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