拳にモノを言わせますけどよろしくて?

7 潮風の町で

  ✻


 その後は貴賓室でおとなしく過ごしたリュティシアたちが港町ポルテスへ到着したのは翌日の昼だった。
 河口から少し河へ入った所に大小の桟橋が作られ、陸には倉庫が並んでいる。岬に立つ灯台とその向こうに広がる海原を目にしたリュティシアは、甲板に立って息を飲んだ。

「これが海……?」

 隣に立つフェリスベルトが軽くうなずく。

「そうだよ、広いだろう。あれが全部塩水なんだ」
「波がすごい……」
「今日はおだやかな方だと思うが」

 湖のさざ波しか知らないリュティシアにとって、果てなく押し寄せるうねりと白く砕ける波頭は十分に荒々しい。

「さあ、下りないと後ろの皆が困ってしまうから」

 この船で一番高貴な客だったリュティシアたちが動くのを誰もが待っているのだった。
 下船の渡し板はフェリスベルトにエスコートされながら歩く。王都で乗り込んだ時より揺れる気がした。海の波が伝わっているのだろう。
 リュティシアは思わずギュッと婚約者の腕につかまる。そのことにフェリスベルトはそこはかとない満足をおぼえた。


 下り立った港には潮の匂いがただよっていた。リュティシアは顔を上げて風をかぐ。

「不思議な香りがします……」
「たぶん潮風だな。旅の情緒はあるが、町は塩害で傷みやすくなる」

 肘を貸し、せっかく婚約者っぽい雰囲気なのに情緒のないことを言い出すフェリスベルトだった。どうしても為政者側の視点で物事を見てしまうのは仕方ない。今回は仕事に来ているのだし。

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