拳にモノを言わせますけどよろしくて?
「私はこのまま倉庫業者と商会の視察に回るよ。宿のことは執事のヴァルターが心得ているから、先にエディと行っていてくれるかい」
「お父さま、まちのたんけんしてもいい?」

 後ろから割り込んできたのはエドゥアルド。見知らぬ町にワクワクが抑え切れていない。フェリスベルトは腕白な息子にいちおう釘を刺した。

「階段を転げ落ちないようにな?」
「……はぁい」
「宿までの間に大きな通りがある。そこの土産物屋をのぞくだけでも楽しいだろう。明日は一緒に町を歩く時間が取れるから、今日はリュティシアの言うことを聞くんだぞ」
「うん!」

 フェリスベルトはリュティシアに会釈すると離れていく。宮廷の事務官たちと共に仕事に向かうのを見送って、リュティシアはホウっと息を吐いた。

(実はとても大変なお仕事をなさっているのよね……)

 リュティシアの前ではいつもなごやかなフェリスベルトだが、ああして官僚たちと言葉を交わす姿はキリリとしていた。時に厳しい質問を発して事務方がタジタジになることもあるらしい。そんな姿を目にすることができてリュティシアはなんだか照れてしまった。

「お母さま」

 エドゥアルドの小さな手が、リュティシアの手のひらにすべり込んでくる。見上げてニッコリする顔が喜びに輝いていた。

「ぼく、ちゃんとする。お母さまのおてて、はなさないからだいじょうぶ」
「まあいい子。じゃあ行きましょうか。ヴァルター、案内をお願いね」
「お任せを」

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