拳にモノを言わせますけどよろしくて?
  ✻ ✻ ✻


 そして夕暮れる頃、フェリスベルトは供を引き連れ宿へと向かっていた。意識を仕事から家族のことへと切り替える。この道をリュティシアたちもたどったはずだ。

(初めての物がたくさんあったろうな……リュティシアはどんな顔をしただろうか)

 いつもクルクルと表情豊かな婚約者のことを考える。フェリスベルトは自然と笑んでしまった。

(楽しんでくれていたらいいが。しかし彼女の反応を見られなかったのは惜しいことをした)

 快活なリュティシアの言動はいつもフェリスベルトの予想を超えてくる。あんな女性は初めてで、そこにいてくれると時間の流れがあっという間に感じた。ポルテスまでの船旅がこんなに短く思えるなんてこれまでになかったことだ。


 宿の玄関を入るとフェリスベルトはうやうやしく出迎えられた。軽く会釈で応え、すぐに上階の部屋へ案内させる。
 廊下に控えていたトルカートに目で尋ねると、エドゥアルドの部屋を示された。そこにリュティシアもいるらしい。

「失礼するよ」

 ノックすると、開けてくれたのはカティアだった。壁際でユーニスが静かに頭を下げる。
 奥の窓は開け放たれていて、外のベランダにリュティシアとエドゥアルドがいた。二人とも旅装をとき、ゆったりした室内着に着替えている。振り返ったエドゥアルドがピョンと駆けてきた。

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