拳にモノを言わせますけどよろしくて?
「もっと言ってくれと思っていそうな者もいるぞ」
「え? んもうユーニス!」
「……だ、だってだってリュティさま! エドゥアルドさまの教育にも悪いですってば!」
「あうぅ……」

 それを言われると反論しにくい。口をつぐんだリュティシアに、エドゥアルドは得意げに胸を張ってみせた。

「まったくー。お母さまはやんちゃだねえ!」

 義理の息子にまで叱られて、リュティシアは思いきりふくれつらをした。


  ✻


 そろっていただいた夕食は新鮮な海の幸だった。
 白ブドウ酒で蒸した魚にはネギやキノコが添えられている。ほんのり香るディルとレモンのおかげか生ぐささなどまったくなかった。エドゥアルドも嫌がることなく、ほっぺたを押さえながら味わっている。
 リュティシアは町で見つけた物にもご満悦だった。散策の成果を語ったのだが、フェリスベルトはあっけにとられる。

「貝殻細工……?」
「ええ。いろいろな形があるんですもの。とても珍しくて!」

 小さな貝殻をたくさんつないだ、風に揺れる飾り。大きな巻貝。貝殻から切り出して磨いた装身具。そんな物たちはガルディアでは高級品だ。なんでもない露店に普通に置いてあるのが面白かった。

(そうか……海を知らないというのは、こういうことなんだ)

 リュティシアの言動は、フェリスベルトに新たな世界を見せてくれる。連れてきて良かったと、あらためて思った。

「楽しめたんだね。何か買ったかな」
「え、いいえ。そんな」
「ヴァルターに言えば、自由にしてくれてかまわなかったのに」

 それは散歩中に執事からも勧められた。でもリュティシアはなんとなくためらってしまったのだ。
 できれば――フェリスベルトも気に入る物が欲しい。そう思ってしまったので。

< 55 / 170 >

この作品をシェア

pagetop