拳にモノを言わせますけどよろしくて?
 だが、リュティシアの方はどうなのだろうか。それがフェリスベルトは心配だった。彼女はどう見ても、フェリスベルトよりエドゥアルドのことが好きだからこの縁談を承知したように思えるが。

(……男として見られていないんじゃないか?)

 今日だけでも、変顔を何回かされた。眉根を寄せたり、叱られて頬をふくらませたり。フェリスベルトに対して、自分を良く思ってもらいたいという意識がないような気がする。それに婚約者の目の前で護衛に抱きかかえられて平然としていたし。

(…………)

 考えていたら落ち込んできた。窓の外に意識を向ける。
 ――リュティシアは、この夜の海をながめているだろうか。


  ✻


 その通り、リュティシアは窓を開けて海を堪能していた。暗い水面はたまにキラキラと星と月の明かりを映すだけだが、波の音は夜の静寂に響いている。

「素敵ねえ、これが海の音……昼間よりくっきりと聞こえるわ」
「でもずっとこれだと、うるさくないですか。海辺の町の人たちは気にならないんでしょうか。ずぶといですね」

 失礼な感心の仕方をしながらユーニスは明日の服を吊るしてブラシをかけていた。フェリスベルトも時間があるそうだし、一緒にお出掛けできるのだ。婚約者としてきちんと仲を深めてもらわなくては!
 
「お化粧もしませんとね。今日は陽射しが強かったですし、帽子だけでは日焼けしてしまいます」
「どうして張り切ってるのよ、ユーニス?」
「何言ってるんですか!」

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