拳にモノを言わせますけどよろしくて?
(フェリスベルトさま、か……)

 おもかげを思い浮かべると自然と口角が上がる。いつも見つめていてくれる優しい青灰色の瞳は好きだ。

(ふむぅ……でもそれって、恋とか愛とかなの? よくわからないわ)

 それにリュティシアがどう考えようと、フェリスベルトの心には前の妻がいるのかもしれない。婚約が決まった頃にうつむいて考え込んでいたフェリスベルトの姿をリュティシアは忘れていなかった。

 ――だから、いい。エドゥアルドの両親として並んでいられたらそれで。

 リュティシアはまた波に耳を澄ませる。
 でも自分の心からは、なんとなく目をそらしていた。


  ✻ ✻ ✻


 翌日、リュティシアは町を散策するための軽快なよそおいだった。
 ふんわりした若草色のワンピースに、初夏なので上着はなし。白いつば広帽子は風に飛ばされないようあごの下でリボンを結ぶ形だった。
 蜂蜜色の髪はサラリとおろしているが、一部だけゆるく編まれてリボンが結ばれている。

「少女じみていますけど、フェリスベルトさまからみればリュティさまなんて小娘に毛のはえたようなものですもんね」

 ひどい論評をしたユーニスの狙いとしては「若さの中にほのかに香る、はかなさ。そして女性らしさ」をアピールするのだそう。何を言っているのかリュティシアにはわからなかった。でも軽やかさそのものは気に入っているからいいか。

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