拳にモノを言わせますけどよろしくて?
「――リュティシアが目をとめた貝殻細工とは、どこの店にあったのかな。連れて行ってほしい」

 宿を出るなりフェリスベルトは問いかけた。きょとんとするリュティシアにかまわず、左ひじを差し出す。エスコートの姿勢だ。
 それを見たユーニスとカティアがスススと進み出てエドゥアルドを挟み込む。こちらは任せて二人の時間を作ってください、という無言の圧にヴァルターやトルカートが沈黙した。女性陣には敵わない。

「お店……ですの?」
「買おうか迷うような物があったんじゃないのかい? まだリュティシアに贈り物のひとつもしていないんだよ私は。少しくらい甲斐性のあるところを見せたいんだ」
「まあ」

 リュティシアは笑い出す。そんなことを気にするだなんておかしな話だ。
 だってこの旅行にしても、旅支度は何も言わずとも上質な品がそろえられていた。船で使ったのは貴賓室。宿も上階のフロアを貸し切っていて、景色は極上。食事も申し分なかった。今のアルヴェインにある最高の物を提供されているのだろうとリュティシアは感じている。

「こんなに何もかも良くしていただいているのに?」
「でもそれは――王弟殿下の婚約者に対してのものだからね。私はリュティシアのための物を選びたい」

 リュティシアその人の喜ぶことを。その真摯な訴えにリュティシアはうなずく。そっとフェリスベルトの腕に手を添えた。

「じゃあ……とんでもない我がままを言ってもよろしくて?」
「いや待て。何を要求されるんだ?」
「ふふ、こっち! ついてきてくださいな」

 歩き出した両親の後を追いながらエドゥアルドは首をかしげる。両手をつなぐカティアとユーニスを見上げても、ニヤニヤするばかりで何も教えてくれなかった。

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