拳にモノを言わせますけどよろしくて?
  ✻


 リュティシアのおねだりは、宣言通りとんでもなかった。
 半分露店のような店にフェリスベルトを引っ張っていき「これが欲しくて」と示したのは指輪――木を削った台に、磨いた貝殻がぐるりと貼り付けてある。

「リュティシア……」

 フェリスベルトは絶句した。そこらの少年が初恋の少女に贈るような品じゃないか。
 ためらってしまったフェリスベルトに、リュティシアは拗ねる目をしてみせた。

「あら。買ってくれませんの?」
「そうじゃないが……もっと値の張る物でもいいんだよ」
「これが可愛くて気に入ったんですもの。高級品ではないでしょうけど、王都に帰ってからもこの町を思い出せる素敵な指輪だわ。お部屋にあるだけで海が聞こえる気がしそう!」

 上目づかいのリュティシアに、フェリスベルトは言い返せなくなった。これはリュティシアの勝ち。

「まあ……確かに可愛らしいよ。リュティシアに似合う」
「そう思いまして? 嬉しい」
「なあに、なにをかうの、お母さま?」

 付き人を振り切ってエドゥアルドが突っ込んできた。指にはめた指輪をリュティシアは得意げに見せびらかす。素直に「かわいいね!」と目を輝かすエドゥアルドにフェリスベルトは苦笑した。

 ――そんな家族の姿を露店の裏からこっそり見ている者がいる。だが遠くにいた護衛たちは、その姿に気づかなかった。


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