拳にモノを言わせますけどよろしくて?

9 覚悟はよろしくて?

  ✻


「浜へおりてみようか、リュティシア」

 町をブラブラした後にフェリスベルトはそんなことを提案した。港から少し海側へ外れた方に行くと、小さな砂浜があるのだ。
 浜辺ならガルディアの湖にもなくはない。リュティシアは首をかしげたのだが、フェリスベルトは真面目な顔をした。

「波が大きく寄せるのは珍しいだろう?」
「……!」

 確かに。湖のさざ波とは違う、海の波。フェリスベルトはさらに言葉を重ねる。

「貝殻が落ちているし、生き物もいるかもしれないな」
「い、行きたいですわ……っ」
「ぼくもー!」

 家族の興味の向くところを正確に把握し、行動をコントロールする。フェリスベルトは意外に策士なのだった。


  ✻


「きゃ、きゃあっ」

 波に遊ばれてリュティシアが悲鳴をあげる。でも笑い混じりの声だった。靴はとっくに脱いでユーニスに預けてある。

「お母さま、うみっておもしろいね!」

 エドゥアルドも裸足で波に勝負を挑んでいた。濡れた砂に足を踏ん張り、引き波に耐える。足の裏でくずれる砂がサラサラズルズルして、くすぐったかった。

< 62 / 170 >

この作品をシェア

pagetop