拳にモノを言わせますけどよろしくて?
 スカートの裾をつまみ、素足で砂浜を踊るように駆けるリュティシアのことをフェリスベルトはまぶしげにながめていた。こんなに奔放な人は貴族社会で見たことがない。
 だが奔放といってもリュティシアはしなやかだ。向き合う相手をないがしろにはしないが、自分もありのままに生きようとする。そんな人。フェリスベルトは天を指してすっくと伸びる大樹を思った。

 エドゥアルドはカニを見つけ、その横歩きをじっと観察し始めた。一方リュティシアは白い小さな巻貝の殻を拾って不思議そうにしている。こんな形がどうやって作られるのか。
 波打ち際にフェリスベルトが歩み寄ると、リュティシアは輝くように笑いかけた。

「フェリスベルトさま、海の水ってしょっぱいんですよね? 舐めてみてもいいでしょうか?」
「え?」

 なんだそれは。大人が求める許可としてはずいぶんおかしな内容だ。

「リュティシア……でも砂混じりだし、あまり」
「私のお腹、丈夫なので!」

 グッと力こぶを作ってみせるとリュティシアはパシャッと波に手をくぐらせる。ペロ。

「――!」

 予想以上だったのかリュティシアの動きが止まった。言わんこっちゃない。

「吐き出すんだリュティシア! ええとユーニス? 何か飲み物はあるかな」
「は、はい!」
「……ふ、ふふっ。だいじょうぶですフェリスベルトさま、びっくりしただけ! これスープの三倍はしょっぱいですわねえ」

 リュティシアは大笑いし始める。ユーニスはまだ心配そうだ。

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