拳にモノを言わせますけどよろしくて?
「リュティさま……ペッてしてくださいな」
「平気よ。ごめんなさいフェリスベルトさま、ご心配おかけして」
「リュティシア……何かと驚かされるのがあなただとは思っているが、エディが真似するよ?」
「あら。いけませんかしら……何ごとも経験ですわよ」

 この義理の母には反省の色がない。フェリスベルトは眉尻を下げた。

「でも美味しくないのは確実だろう?」
「そうですわね」

 クス、と笑うリュティシアに、フェリスベルトはやわらかなまなざしを投げる。少し下がって二人の様子を見守るヴァルターはしみじみ目を細めた。

(前の奥さまを亡くして以来、こんなに幸せそうなフェリスベルトさまは見たことがありません。王族としての義務感からご再婚を決めたのに……リュティシアさまが明るく楽しい方で良かった)

 そんなゆるい空気を破ったのは、カティアの声だった。

「あら……エドゥアルドさまは?」
「え?」

 皆がハッとする。あたりを見回してもカニを追いかける男の子の姿はなかった。両親もぼう然とする。

「エディ……?」
「やだ、エディどこ?」

 一瞬で胸が不安に塗りつぶされたリュティシアを、耳鳴りが襲う。
 キ――ンッ!

「あ……!」

 これは加護の発動のしるし。
 しかし〈育成〉でも〈剛力〉でもない。リュティシアがひた隠している、もうひとつの加護――〈看破〉のだ。
 リュティシアは頭を押さえて蒼白になる。

「エディが……さらわれた!」
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