拳にモノを言わせますけどよろしくて?
「なんだって? どうしたんだリュティシア」
「見えましたの、加護で。ガラの悪そうな男たちがエディの口をふさいで、かかえて逃げていく……」

 取り乱すリュティシアの訴えにフェリスベルトは立ち尽くした。だがすぐに腹をくくる。今言われた「加護」がなんなのかわからないが、リュティシアは嘘をつくような人ではない。

「どこに行ったかわかるか」
「岩場をよじ登っていた、と思いますわ」

 エドゥアルドがいた向こう側にはゴツゴツした崖がある。カニに夢中で浜の端まで行ってしまったエドゥアルドを、男たちが連れ去ったのだろうか。

「トルカート!」
「はっ」

 うなずいたトルカートが走る。護衛たちを班に分け捜索しなくては。
 護衛は浜の外にいたのだ。家族のひとときを、ものものしい雰囲気にしたくなかったから。それが仇となりエドゥアルドは皆の視界から外れてしまった。なんたる失態か。

「私も行きますわ。ユーニス、靴を」
「はいっ」

 飛んできた侍女が足の砂を払ってくれる。キリリと厳しい顔のリュティシアを、フェリスベルトは制止した。

「待つんだ。リュティシアが行っても邪魔になるだけだろう」
「いいえ。私ならエディを助けられる――お願い、信じてくださいませ」

 リュティシアは言い切る。そしていつも小言をもらすユーニスも、反対しなかった。

(――何か確信があるんだな)

 それは、知らない加護によるものなのか。フェリスベルトは婚約者の言葉に賭けることにした。

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