拳にモノを言わせますけどよろしくて?
「――わかった。皆で行こう」
「ありがとうございます!」

 小走りに駆け出しながら、リュティシアは唇をかむ。

(エディ、ごめんなさい。あなたから目を離してしまった。フェリスベルトさまとの時間が楽しくて――私エディのお母さまなのに!)

 キ――ン!

「あうっ」

 また耳鳴り。粗末な小屋に運び込まれるエドゥアルドの姿が脳裏に浮かぶ。

「リュティシア?」
「――町中じゃありませんわ。周りに草が生えていて、物置のような」

 フェリスベルトとトルカートが素早く相談する。それは漁師小屋ではないだろうか。

 この〈看破〉をリュティシアは使いこなせない。本来なら敵の動きを知り戦略を立てることすら可能な、武人には垂涎の加護が〈看破〉。
 でもリュティシアはごく狭い範囲の、今しも起こることしか見破れないのだ。だから婚約破棄のきっかけとなった燭台落下事件も、突き飛ばしてなんとかするしかなかった。

(こんな……こんな中途半端な加護)

 欲しくなかった。自分の無力を突きつけられるから。
 リュティシアの胸には今、夜の海のように暗い後悔と恐怖が渦巻いている。


 ――――また間に合わなかったらどうしよう。

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