拳にモノを言わせますけどよろしくて?
  ✻ ✻ ✻


 薄暗い小屋の中には古びた(かい)や漁網、ザルと桶が積み上げられていた。
 それらのすき間に縛られて転がされているのは上品な仕立てのシャツと半ズボンを身に着けた男の子――エドゥアルドだ。

「んー! むーう!」
「うるせえぞガキ!」

 口に布をかまされたエドゥアルドがうなるのを、ひとりの男がぞんざいに一喝した。

「いい家の子みたいだな……上等な服じゃないか」
「へへ、いくら吹っ掛ける? 親は王都の奴だぜ」

 男たちは三人。ゴツい体格のオッサンと、ヒョロい体格の若いのと、チビのオッサンだ。
 そのチビは――リュティシアが指輪を買った露店の裏から、一行をのぞいていた男だった。あの時にエドゥアルドに目をつけ、身代金目的の誘拐をたくらんだのだ。

 軽装で、護衛とも距離を空けて歩いていたリュティシアたち。まさか王弟一家だとは思いもよらないゴロツキどもは、気軽に人さらいに及んでしまった。知らずに国賊と成り下がった男たちは、まだ小銭稼ぎくらいの気分でいる。

「ガキは閉じ込めておいて、さっさと親に談判しに行こうぜ。役所に駆け込まれちゃあ困る」
「ああ、そうか」
「だからいくらにするよ? 少しはいい目を見てえなぁ」

 言い合いながら男たちは立ち上がる。その時――。
 バキィィッ!
 ボロい扉が砕け散った。外の光が差し込む。男たちは仰天し、ワタワタと腰が引けた。

「……なっ!?」
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