拳にモノを言わせますけどよろしくて?
「――うちのエディがここにいますわね?」

 鋭い声はリュティシアのものだ。
 スッと下ろした右脚は、今この扉を蹴破ったから。腕はいつでも闘えるよう構えている。
 そんな姿でもエドゥアルドにとっては救いの女神。歓喜して母を呼ぶ。

「んむーむむーっ!」
「ええ、お母さまが迎えに来たわよエディ! あぁん怖かったわねえ」

 戦士のごとき厳しい視線が、瞬時に慈母になる。
 その後ろにはトルカートら護衛たちが頬を引きつらせながら従っていた。リュティシアのこんな姿、予想だにしないじゃないか。そりゃ活動的な女性だとは思っていたけど!
 さらに後ろでフェリスベルトも絶句していた。
 漁師小屋の前に到着するとリュティシアは、ここに犯人とエドゥアルドがいると断言した。と思ったら止める間もなく「行きますわ」と拳を握り軸足を踏み込み扉を――。

(鮮烈すぎる。こんな姫君がいるなんて)

 フェリスベルトは壊れた扉の前で凛々しく立つ背中に目を奪われ、動けなかった。リュティシアは怒りに燃えつつ静かに告げる。

「あなたがた、よくも私の息子に手を触れましたわね? その蛮行、後悔させますわ――覚悟はよろしくて?」

 リュティシアがグッと肘を引く。微笑みはどことなく凄惨だ。
 そして――加護〈剛力〉を発動!

 ゴロツキたちには、格の違いを悟る間すら与えられなかった。
 ゴツいのが殴られて壁まで吹っ飛ぶ!
 ヒョロいのが蹴られて窓を突き破る!
 チビがポイと投げ捨てられて護衛たちの前にはいつくばる!

「は、犯人を確保せよ――!」

 小屋に護衛たちがなだれ込んだ。
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