拳にモノを言わせますけどよろしくて?
「リュティシア、手に傷が……」
「え? ああ、ちょっと殴り飛ばしましたから、そのせいですわね」
「お母さま、カッコよかった!」
「うふふ」
「笑い事じゃないぞ! ヴァルター!」

 フェリスベルトはズンズンと大またに歩いて外へ出る。エドゥアルドを片手に抱き上げ、もう片手はリュティシアの背に添えて、だ。

「ヴァルター、リュティシアが怪我をした。すぐに手当てを」
「えええっ!? リュティさまでもお怪我なんてするんですか!」

 荒事から引き離されて待っていたユーニスが大声をあげる。それは青天の霹靂。でもリュティシアは必死に否定した。

「ちょっとこすって赤くなっただけよ。それよりエディが縛られてすりむいたかも。診てもらわなくちゃ」
「ぼく、もういたくない。げんきだよ」
「まあエディったらなんて健気なの……!」

 ピンシャンして笑い合う家族。その前に引き出された犯人たちの方は、ボロボロに痛めつけられている。立ち回りをしたのはリュティシアひとりなのに。
 フェリスベルトが婚約者に迎えた姫君は、いったい何者なのか。王弟殿下に仕える人々は顔を見合わせた。


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