拳にモノを言わせますけどよろしくて?
 とはいえエドゥアルドには貴族の義務よりも、紳士たるべきという心が先に根付いているようだ。リュティシアを見つめフンスと鼻息を荒くする。

「ぼくは子どもだから、よわいよね。でもがんばってつよくなって、おとなになったらぼくがお母さまをまもるの!」
「まあエディ……ありがとう、頼りにしてるわ」

 むぎゅ、と息子を抱きしめてリュティシアはとても幸せだった。とろけそうな笑顔をフェリスベルトにも向ける。

「エディのこんな志は、フェルさまがお手本になっているからですわね」
「いや……そう、かな。うん」

 フェリスベルトはドギマギした。愛に満ちた笑みで心拍数が跳ね上がる。それに「フェル」という言い方も嬉しかった。
 フェリスベルトが「リュティ」と呼ぶならリュティシアからは「フェル」で、と決めたのだ。なんだかとても気安くて近くて、相思相愛のように聞こえていい。

 フェリスベルトはリュティシアのことをとても好ましく思っている。エドゥアルド誘拐事件を経て、その気持ちは強まった。

(――舞うように敵を倒す姫君など、他にいるものか)

 リュティシアの鮮烈な行動は、フェリスベルトの心に深く刻み付けられたのだ。まあ――女性の趣味がおかしいと(そし)られるかもしれないとは思うが。それだけでなく優しさやお茶目なところだって可愛いと感じているのだから、問題なかろう。

 だがフェリスベルトは、リュティシアの心がどこにあるのか不安だった。
 元から政略結婚を強いられてこの国へ来たリュティシアだ。エドゥアルドの母としてなら、と婚約してくれただけかもしれない。そのおそれがずっとぬぐえずにいた。

「ねえねえ、お母さまのバーンッていうキック! ぼく、もういっかいみたい!」
「まあエディ」

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