拳にモノを言わせますけどよろしくて?
 母親へのおねだりとして、ずいぶんおかしなことをエドゥアルドが言い出した。でもリュティシアは平然と立ち上がる。

「仕方ないわね、お手本を見せるわ」
「だめですリュティさま! スカートですよ!」

 壁際からユーニスが悲鳴をあげた。侍女として、なるべく口出しせず静かにしていたいのにリュティシアはどうしてこうなのか。フェリスベルトも目を泳がせる。

「あー、ゴホン、私もちょっとそれは目のやり場に困るな」
「嫌だわフェルさま。中が見えないような足さばきぐらいできましてよ?」
「そ、そうなのか……?」
「フェリスベルトさま! リュティさまに言いくるめられないでくださいっ!」

 抗議するユーニスと、横で笑い死んでいるカティア。これは、なごやか……と言っていいのかどうか。
 でもリュティシアは幸せだと感じた。フェリスベルトはそのままのリュティシアでいいと言ってくれたから。
 やはりフェリスベルトは大人なのだ。心に余裕がある。ゴロツキ相手に立ち回りを演じる女へ「そのままで」と言える男がどれほどいるだろう。

 リュティシアはしとやかに微笑んだ。軽く拳を握る。シュ、シュッ。

「エディ、パンチのお稽古にしましょう」
「わーいっ、おしえておしえて!」
「でもその前にお約束。弱い者をいじめるのには使わないこと。よろしくて?」
「……はいっ」

 エドゥアルドがキリリと返事し、リュティシアは微笑んだ。これは幼い性根に叩き込んでおかなければならないこと。

 力を得たならば、弱きを守れ。悪をくじけ。
 ――だって、その方が気持ちいいですものね!

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