拳にモノを言わせますけどよろしくて?

2 嫌なのはお互いさま

  ✻ ✻ ✻


「――リュティさま、さっそく〈剛力〉を発揮したのはまずかったですよ。ついでに第二王子をぶん殴ったのも、いけません」

 遠慮なく苦言を呈したのはリュティシアの侍女ユーニスだった。
 気を失って倒れるフリをして婚約者を殴ったこと、彼女にはバレている。ユーニスは専属侍女として広間の隅に控え、すべてを見ていたのだ。

 リュティシアと同い年のユーニスは気心の知れた仲良し。身の回りを整えるだけでなく、何かと大ざっぱなリュティシアを補佐するために一緒にアルヴェインへやって来た。
 案の定リュティシアは初日から加護〈剛力〉でやらかし、婚約破棄騒動を起こしてくれた。ユーニスは頭が痛いのだが本人はケロリとしている。

「だって人助けをしたのに婚約破棄ってどういうこと? 何よセミオンさまったら、公衆の面前で吹っ飛んだからって私のせいにして。器が小さいわ!」
「いえ、あの状況ですよ。面目丸つぶれですって……」

 普通の王子さまならプライドが粉々になって当然だ。セミオンをかばったユーニスへ、リュティシアは唇をとがらせる。

「まだ挨拶もしていない義理の兄夫婦が亡くなってしまうのは嫌でしょう? 助けられるものは助けないと」
「それはそうですけど。せめて悲鳴をあげて『逃げて!』と叫ぶぐらいにしてほしかったです」

 それならセミオンがヘソを曲げることもなかったはず。今さら言っても後の祭りだが。

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