拳にモノを言わせますけどよろしくて?
 ひとまず王宮の賓客となったリュティシア。与えられた部屋はゆったり広く、応接室と居間と寝室と侍女の部屋とが備えられている。その居間に食事を運んでもらい、リュティシアは気楽な夕食を楽しんでいた。ガルディアからの一行を歓迎する晩餐会が中止になったからだ。
 主役の片方が公の場で婚約破棄を宣言したのだから、晩餐会どころではない。何もなかったように祝宴を開くほどの心臓をアルヴェイン国王は持っていなかった。今頃は甘ったれ第二王子の所業に頭を悩ませていることだろう。

「ふーんだ。あんな方、私だって嫁ぐのはごめんだわ」
「はあ……でも王族貴族の結婚てそんなものじゃないですか? どんな相手でもとりあえず縁だけ結んどけ、ていう」
「わかってるけど! できれば素敵な方がいいんだもの。あーあ、この結婚どうなるのかしら」

 互いに不満を持ちつつ、とりあえず婚姻は成立させるのだろうか。
 それともリュティシアが帰国するはめになるかもしれない。結婚の前に帰されただなんて、とても不名誉な経歴だ。
 リュティシアは〈剛力〉持ちではあるが、心だけならそれなりに乙女だった。どんな婚約者に会えるのか夢を見ながら隣国まで来たのに、対面するなり「馬鹿力」と罵倒されるなんて納得できない。リュティシアは猛抗議した。

「自分より強い妻に恥をかかされた? そんな風に拗ねる殿方なんて幻滅だわ!」
「まあ実際リュティさまの方が絶対に強いですし、それを受け入れてもらえないのは困りますね」

 男らしさにこだわり過ぎていじけるなんて、とても男らしくない。

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