拳にモノを言わせますけどよろしくて?
涙降れば地固まる

11 お披露目の舞踏会

  ✻ ✻ ✻


「王弟フェリスベルト殿下、ご子息エドゥアルド殿下、並びにガルディア王国王女リュティシア殿下――!」

 舞踏会の日、王宮の大広間に響く声に応え、三人は優雅に人々の前へ現れた。
 婚約者同士が腕を組むのではなく、間に幼いエドゥアルドを挟む形での入場は参会者を沸かせる。大好きな両親と並んでお澄まし顔の小さな紳士は、その愛嬌で貴族たちからも人気があった。

 今日のリュティシアのドレスは深い青だ。これはフェリスベルトの瞳が青灰色だから。そしてフェリスベルト本人はグレーを身に着けている。
 リュティシアの瞳は榛色。それはエドゥアルドが着てくれていた。互いの瞳の色を服に取り入れるのは恋人や夫婦で行われる愛情表現だが、リュティシアたちはそれを家族で示してみせたのだ。

「リュティシア、とても素敵なドレスね」

 ささやいてくれたのはエリセテ太后だった。今日は息子フェリスベルトの慶事でもあるので公の場に姿を見せている。リュティシアとも幾度か顔を合わせていて、親しく名を呼ぶ間柄になっていた。

「ありがとうございます。でも私の髪と合わせると派手な気がして」
「そんなことはないわ。明るい夜空にきらめく月のよう……かしら」

 結い上げたリュティシアの蜂蜜色の髪を、エリセテは月にたとえる。
 夜の空と言われたドレスだったが、リュティシアが思うのは旅で見た景色だ。服の青はまるで海をまとっているごとくで波音が聞こえる気がした。贈られた貝殻の指輪はこんな場には着けて来られないけれど。
< 80 / 170 >

この作品をシェア

pagetop