拳にモノを言わせますけどよろしくて?
 微笑むリュティシアとフェリスベルトを見比べると、エリセテは楽しげに目配せをした。

「フェリスベルトったら美しい婚約者を褒めることもしていないでしょう? 気が利かないわねえ」
「母上……」

 フェリスベルトが眉尻を下げる。嫁となるリュティシアをまじえて和やかな空気は、会話が聞こえなくても参列者に伝わった。

 だが国王一家が揃うということは、そこにセミオンもいるのだった。
 婚約破棄宣言以来の顔合わせになるリュティシアだったが、優雅に一礼する。セミオンも余裕の顔で会釈を返してきた。良くも悪くも王子としてのプライドはある男なのだ。

「エドゥアルドと仲が良いと聞いて、さすが〈育成〉の加護持ちだと感心したぞ。叔父上との式を私も心待ちにしている」
「まあ、ありがとうございますわ。セミオンさまにも良いご縁があるよう願っておりましてよ」

 社交辞令ではあるが、やや棘を含んだやり取り。大広間は一瞬ピリッとした。しかしさりげなくフェリスベルトが割り込んでリュティシアを引き離す。国王の横に並んでからささやかれた。

「こういう場でのあしらいは私に任せてもいいんだよ」
「……返す言葉がありませんわ」

 いちおう反省する。社交に必要なのは真っ向勝負ではないのだから。
 だが、つい言い返してしまった。リュティシアは心意気にまで〈剛力〉を秘めているのかもしれない。


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