拳にモノを言わせますけどよろしくて?
 尊大なモンサント侯爵が去った後、フェリスベルトの前で丁寧に頭を下げた男女がいた。エドゥアルドがニッコリする。

「おじいさま、おばあさま。おひさしぶりです!」
「ほほうエドゥアルドさま、ご立派な挨拶をなさるようになりましたな。爺は鼻が高うございますぞ」

 それはエドゥアルドの実母の両親、サーレス伯爵夫妻だったのだ。エドゥアルドにとっては母方の祖父母にあたる。目を細めて孫を愛おしむと、伯爵は初めて会うリュティシアへなんともいえないまなざしを向けた。寂しさのような、安堵のような。

「この度はご婚約おめでとうございます。エドゥアルドさまは我が娘の忘れ形見……王女殿下からとても愛されていると聞き及び、僭越ながら胸をなでおろしました」
「……エディのこと、私の力及ぶ限り大切にしたいと思っています」

 短いが想いをこめた言葉を交わし、伯爵夫妻は下がる。リュティシアはたまらない想いで見送った。

(お嬢さまを亡くされて、孫とはいえ王族のエディには頻繁に会うことも叶わず、あげく継母が来ることになった……それは案じてしまうわね)

 彼らの不安はリュティシアに会って払拭されただろうか。〈育成〉持ちとはいえ若い後妻が継子にどう接するかなど信用できなかろう。

「リュティの人柄は伝わったと思う」

 横でフェリスベルトがつぶやいた。リュティシアのことは見ないが、励ましてくれているのだ。そしてエドゥアルドもリュティシアに手を伸ばす。

「お母さまは、ぼくのだいすきなお母さまだよ」
「エディ……ええ、私もエディが大好き」

 微笑み合う義理の母子の姿をサーレス伯爵夫妻はそっと振り返る。エドゥアルドの笑顔には安堵するが、そこに立って笑うのが娘でないことに一抹の寂しさを抱くのは仕方なかった。



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