拳にモノを言わせますけどよろしくて?
 舞踏会のメインといえば、もちろんダンス。
 人々が集う大広間は王宮でもいちばん大きな広間だ。楽団が隅に控えていて、貴族たちの挨拶と王からの言葉が終わると音楽が始まる。

「さあリュティ」

 フェリスベルトに手を取られ、リュティシアは真ん中に進み出た。今日の主役の一角にあたる二人が踊らないと他の人が始められない。

「フェルさまの足を踏んでも許してくださる?」
「そんなことになるとしたら私のリードが悪いんだ」

 軽口を言い合いながら一礼した二人は優雅に踊り出した。すべるようなステップ。見守る貴族たちから笑みがもれる。

「……王弟殿下はようやく吹っ切れたのかな」
「お幸せそうで何よりだ」

 先妻を亡くしてから、フェリスベルトはずっと舞踏会で踊ろうとしなかった。静かな目で会場の喧騒をながめるばかりだったのだ。
 それがひょんなことからまとまった縁談の相手とあんなに打ち解けて踊っている。フロアに次々加わる男女を気にすることなくリュティシアだけを見つめて微笑む姿は一途な心を感じさせた。

「これで王家に新しい風が入るな」
「……お子も生まれるとよいが」

 そんな声もチラホラ聞こえる。今の王族でいちばん若いのはエドゥアルドだ。王太子夫妻に懐妊の兆候はなく、第二王子は婚約を破棄。となると世継ぎが心配される。
 王弟の子であってもいいから、人数がいないと何があるかわからない。王権が揺らぐようなことがあれば貴族たちも争いに巻き込まれてしまうので、王家に嫁ぐ女性には誰もが下世話な興味を向けるのだった。

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