拳にモノを言わせますけどよろしくて?

12 それぞれの悩み

  ✻ ✻ ✻


「――セミオンのやつ、やはり私に対して含むところがあるに違いない」
「そのようなことを口にしてはなりません、王太子殿下」

 パルミロの手を握ってその体内の息吹を探りながら、ジェレミアスは困り顔だった。
 ここはパルミロの私室。人払いはしてある。しかしあまり角の立つ話は聞かなかったことにしたいものだ。晶化術を施す側であるジェレミアスは患者に愚痴をこぼされることも多いが、この内容は政治的に過ぎる。

「お心がささくれていらっしゃるようですな。お悩みを結晶にいたしましょう」
「……頼む」
「感情を平らかにして、ご対処なさいませ。人間は怒りや迷いの中にいると考えを誤るものでございます」
「うむ。わかってはいるのだが。情けないな」
「そのための晶化術でございますので。なに、殿下にまったく人間みがないのも臣下がついていけなくなります。よろしいことですよ」

 ジェレミアスは施術用品の小箱から符を選んで取り出す。描かれた陣により結晶化される感情が違うのだ。不安。妬み。怒り。焦り。人を蝕む負の心はさまざまで、患者により取りのぞく量も異なる。

 パルミロが苛立っているのは、舞踏会でのモンサント侯爵が発端だった。
 王太子妃決定に際して敗れた因縁のあるモンサント家。それが多産家系だという当てこすりはパルミロ夫婦には刺さる。世継ぎを生さなければ、というプレッシャーは他人が思うより壮絶なものだ。
 しかし、その侯爵が売り込んできた娘アデリアにダンスを申し込むとは――セミオンの行動は、パルミロではなく自分の子に次代を継がせんとする野心の表明ともとれた。

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