拳にモノを言わせますけどよろしくて?
  ✻ ✻ ✻


「――舞踏会、ですの? また?」

 先日同じようなことを言ったな、と思いながらリュティシアが問い返したのは、エドゥアルドが「ぶとうかいにでたい」と言ったからだ。
 でも今は踊っているわけではない。フェリスベルトのいない隙に、エドゥアルドへキックを伝授しているのだ。
 キックから流れるように間を詰めてのジャブ。相手の拳をスイとよけてのボディ、そしてストレート。見せられた流れをエドゥアルドはキャッキャいって真似する。そして「ぶとうかい」発言なのだった。

「それは武闘会でございますねえ」

 カティアが注釈を入れてくれた。演武の一大イベントで、毎年秋になると行われる行事だそう。収穫祭の余興のような側面もあるが、貴族や騎士階級からも参加して盛り上がるのだ。

「平民の入隊者にしてみれば出世の契機でもありますけど、男同士で実力をアピールして……まあ騒ぎたいだけですわよ」

 カティアは苦笑いした。男たちの馬鹿騒ぎなど、女たちにしてみれば生温かく見守ることになりがちなもの。

「それは……危険ではないの?」
「力自慢とか馬術、剣術に部門が分かれておりまして。剣術の試合ではしっかり鎧を着るんですよ。ひどい怪我人などはほとんど出ません」
「そうなのね、じゃあエディは子ども部門かしら」
「子ども部門はございませんわ。エドゥアルドさまの出場はお稽古を積んで、何年か後になりますわねえ」

 ほほほ、と笑うカティアに、エドゥアルドは頬をふくらませる。

「つまんないの。ぼくもお母さまみたいにつよくなりたーい」
「あらあら、私は武闘会には出ませんことよ? 剣や馬は扱えないし、本職の兵士のみなさん相手ではとても戦えないでしょう」

 それは嘘。いや本当か。武闘会の頃には王弟妃となっているはずのリュティシアが相手では、兵士たちも手を出せずに逃げ回るだろう。
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