拳にモノを言わせますけどよろしくて?
 ぷう、と拗ねるエドゥアルドの頬はまあるい。ツンとつついてリュティシアは言い聞かせた。

「武闘会に出られなくても、お稽古はできますもの。それにエディにはお勉強も頑張ってほしいわね。フェルさまみたいに国を富ませる方策を考えるのも大事なことだわ」
「お父さまもカッコいい?」
「もちろんよ」

 リュティシアは大真面目に答える。港への旅で垣間見た、官吏や技術者たちと意見を交わす姿はとても頼もしかった。エドゥアルドにもあんな風になってもらいたい。姿だけなら父親ゆずりの黒髪でもあるし、似た雰囲気に成長するだろうか。

(そういえば……エディの淡い緑の瞳は)

 ふと胸が痛んだ。それは実母ゆずりのものなのか。舞踏会で挨拶された祖父母のうち、伯爵夫人がそんな瞳の色だった気がする。
 リュティシアのそんな物思いに気づかずにエドゥアルドは口をとがらせて困っていた。

「そっかあ……ぼく、お父さまみたいにもなりたいけど、どうしよう。がんばることいっぱいなんだよね」
「そうですわね。じゃあ体術のお稽古はこのぐらいにして、次はお勉強ですかしら」
「ええー、もう?」
「リュティシアさま、家庭教師までは少し間がありますけれど……」

 カティアの申し出にリュティシアはキラリと目を光らせた。

「じゃあ――ちょっとだけおやつをいただきましょう!」
「やったあ!」

 エドゥアルドはピョンと跳ねる。
 大きくなるのもエドゥアルドの大切な任務だ。たくさん動いて、たくさん食べて。そんなエドゥアルドを見ていられることがリュティシアは嬉しい。
 そうできなかった実母の代わりになれるかどうかはわからないが、誠心誠意努めたいと思った。

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