拳にモノを言わせますけどよろしくて?
  ✻ ✻ ✻


「――では、起動いたします」

 ヴンッ――静かな音を立てて回転を始めた、大人がひと抱えにできないほどの機械。フェリスベルトと技師、そして晶術師たちが固唾を飲んで見守る。フェリスベルトは近くに手をかざしうなずいた。

「うん、冷えている」
「ほう……!」

 皆から喜びの声がもれた。しばらくして技師が機械を停止させ、蓋を開ける。据えられた筒の中身は、シャクシャクに凍りかけた水だった。フェリスベルトが大きくうなずく。

「よし、成功かな」
「さようですね……一定の、という保留つきではありますが」

 ここは王立結晶院の実験室だった。フェリスベルトが命じて行われていたのは、結晶〈冷〉を使用しての凍結機械開発。多岐にわたり結晶の方途を研究するプロジェクトのひとつがこれだ。
 技師と晶術師が頭を突き合わせて機器をのぞきこみ、議論を交わす。若い者ばかりの開発チームは和気あいあいだ。

「結晶はまだ残っているな。稼働時間を伸ばして完全凍結までやってみるか」
「その前に外部の断熱性能を改良すべきです。周辺に冷気がもれているのは効率上問題がある」
「確かに。結晶は貴重品だ」

 一歩下がって聞きながらフェリスベルトは気持ちが高揚するのを感じた。

(人々の悲しみ、絶望、虚無。冷え切った心から抽出した結晶で、こんなに便利なものが……)

 負の感情も、使い方次第で誰かを助ける宝となる。そんな仕組みを作りたいとフェリスベルトは考えているのだ。
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