拳にモノを言わせますけどよろしくて?
「いちおう確認するが、その場にヴァルターはいなかったんだな?」
「私は潔白でございますよ、フェリスベルトさま」

 主人の上着を受け取りながら、執事はわざと慇懃に一礼する。天真爛漫なリュティシアの振る舞いを見るのは楽しく心躍ることだが、体術を始めた時点で退散していた。

「フェリスベルトさまを差し置いて私がもろもろを拝見するのは、野暮というものでございますから」
「……気づかいに感謝しよう」

 リュティシアの夫となるのはフェリスベルト。愛らしいリュティシアの行動の何もかもを知る男性は、まずフェリスベルトであるべきだ。ただしエドゥアルドはのぞく。子どもだし、息子になるのだから。

「あとはねえ、おべんきょうもした。お父さまみたいになってねって、お母さまいってたの」
「そうか……」

 それはどういう意味だろう。ただ父親を尊敬するよう仕向けてくれたのか、それともフェリスベルトのことをリュティシア自身も好ましく感じているのか。

「勉強といってもいろいろあるぞ。リュティはどんなことを言っていた?」
「んーとね。かっこいいって」
「うん? 何が……?」
「お父さまのこと」

 当たり前の顔をしてエドゥアルドは父を見上げる。父と母、そして自分は仲よしだと疑いもしない瞳だ。フェリスベルトは動揺した。

(仲は悪くない。それはそうなんだが……)

 リュティシアと自分は、「両親」ではなく「夫婦」として関係を深められるのだろうか。まあ王族同士の結婚などただの契約なのだから、粛々と婚儀を済ませ、初夜を迎え、義務のように子を産んでもらってもいいのかもしれないが。

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