拳にモノを言わせますけどよろしくて?
「わかりますけど……」

 リュティシアは目を伏せた。ずっと気にかかっていたことを訊いてもいいだろうか。

「フェルさまは……お嫌じゃありません?」

 それは、この結婚そのもののこと。
 甥のセミオンから押しつけられた隣国の王女など迷惑じゃなかったか。エドゥアルドという息子を遺してくれた妻をまだ愛しているかもしれないのに、国のために身を挺したのかという不安がぬぐえなかった。
 だがフェリスベルトは、そんなリュティシアの想いには気づかない。軽く笑いながら書類に目を通していた。

「何故? 私は盛大な宴でもかまわないよ」
「そうではなく……いわくつきのお式ですし」
「セミオンのことかい? あれはあいつが悪い。リュティにはなんの責任もないことだ。それに元の予定でも式は華やかになったはずだしね」

 何を言ってもフェリスベルトの返答はおだやかで突っ込みどころがない。むしろそのことにリュティシアの心にはさざ波が立った。

(フェルさまご自身は、どうなさりたいの……?)

 常識的にはこう、とか。外交儀礼だから、とか。知りたいのはそんなことじゃなくて、フェリスベルトが華やかな式典を好むのか本当は違うのか。
 そして最も答えてほしいのは、リュティシアとの結婚を心から望んでいるかどうかという問いだった。
 ――でもそれを訊くのはなんだか、怖い。



< 98 / 170 >

この作品をシェア

pagetop