花売り令嬢の身請け~公爵様は一目惚れに抗えない~
変化が訪れたのは、秋も深まった頃だった。
レオナールが忙しくなった。
朝早く出かけ、夜遅く帰ってくる。
時には泊まりで出かけることもあった。

「どこに行かれるんですか?」
「ちょっと、調べ物があって」

レオナールの答えは曖昧だった。
だんだんと顔を合わせる時間が減っていった。
庭園で作業をしていても、レオナールは姿を見せない。
食事も別々になった。

「私、何か悪いことをしたのだろうか」

約束を押し付けすぎたのだろうか。
キスを拒んだのが、まずかったのだろうか。
それとも――もう、飽きられてしまったのだろうか。

夜……
レオナールはエリーゼが眠ってから帰宅しても、寝顔を確認しに来ていることをエリーゼは気が付いていた。
いつもは寝たふりをしているけれど、今晩だけはどうしても……

キスはしないと約束した。
でも、せめて抱きしめるくらい……そんなことを願ってしまった。

ルームランプだけの部屋。
ドアが開く小さな音。
足音を立てないように近寄る気配。

ベッド脇に腰を下ろす気配のすぐあとに、頬に触れる温もりに手を添える。

「エリーゼ……!ごめん、起こしてしまって」
「レオナール様……」
「本当にすまない。今忙しくて。おやすみ」
「……あ……」

レオナールは疲れた顔で、足早に部屋を出ていく。
バタンという扉の締まる音を聞いた瞬間、涙が溢れてくる。

「もう、ダメなのかもしれない……」

彼の心は、もう自分から離れてしまったのだ。
そんな確信がした。
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