エリート外交官の完璧なる偽装結婚 ……のはずが旦那様は私を溺愛しているみたいです?!
 本を読んで、機内食を食べて、寝て、また本を読んで。ずっと座りっぱなしで体の痛みを感じた頃に、やっとイギリスに到着した。

 飛行機と空港をつなぐ通路を通り抜ける時は雨の匂いがした。空は晴れているのに不思議だ。でも肌に触れるしっとりとした空気は嫌いじゃない。異国に辿り着いた高揚感で、足取りは軽い。

 長い行列の入国審査を抜けてターンテーブルの前で荷物が出てくるのを待っていた時、「ニナ!」と私を呼ぶ声がした。

 驚いて振り返ると、アリスがこちらへ駆け寄ってきて、私に抱き着いた。彼女の両親も後ろからついてきている。

「君も同じ飛行機だったのか。ハネダでは娘を助けてくれてありがとう。また会えて良かったよ。お礼をできないことにずっとヤキモキしていたから」

「大したことはしていないですし、お礼なんて結構です」

「そう言わずに。ロンドンには何日いる? 四日後にもまだ滞在しているなら、ぜひ私たちのパーティーに参加してほしい」

「えぇ?」

 まさかのお誘いに目を丸くした。

 私たちのって、まさかパーティーを主催しているんだろうか。もしかしてとんでもないお偉いさん? アリスはお嬢様だったんだ。

 でもパーティーなんて、日本でもろくに参加したことない。ドレスも持っていないし、さすがに参加は難しい。どうにか穏便に断れないか言葉を探っていると、誰かが私の肩に手を置いた。
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